超現代語訳
川上村の吉野林業を学ぶ
これからの時代に活かせることを、
川上村と吉野林業の歴史に学びます。
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2022.3.20
■「吉野林業と優良材」に学ぶ (33) 吉野林業と優良材の形成⑥
-優良材の形成と育林技術-
現在(本書発刊の昭和57年頃)、樽丸の需要は化粧樽としてわずかにあるとはいえ、もはや吉野材の主力商品ではなくなり、杉材は主として建築用材のみに向けられている。
とはいえ、かつての密植、多間伐の吉野式施業方式は、慣行的にほとんどそのまま踏襲されており、従来とほぼ同じ材質の木材が生産されている。
木材利用の面からその変化を見ると、ひとつは杉の間伐材小丸太による磨丸太の加工が非常に盛んになったということと、かつて樽丸に利用された杉大径木は、挽材にされ赤杉造作材として利用されているほか、杉、桧、中目丸太の無節材は柱材に、あるいは集成材の化粧単板などに利用されており、利用面では何ら問題はない。
戦後は多角的な商品開発にともなって、むしろ吉野材の利用範囲は拡大し、従来以上に付加価値は高まっていると言えよう。
ということは、江戸時代に形成され発展してきた密植、多間伐の吉野式施業方式は、自然的条件と相まって吉野優良材育成の根幹となっているわけで、将来においても需要面で余程の構造変化が起こらない限り大きく修正を受けることはないと考える。
撮影:辻本 勝彦
参照:「吉野林業と優良材 (岩水豊 著)」
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ところが、この記述後の世界は、人々の生活様式が凄まじく進化し、地震災害や気候変動により建築用材の要求されるスペックも大きく変化しました。そうなると、安価で集成加工しやすい外国産材への需要が一気に高まります。需要面での「余程の構造変化」がすぐにやってきたのです。
変化に対応するにはスピードや柔軟性が求められるものですが、止めを刺されたバブル崩壊からすでに30年が経過しています。吉野かわかみ社中が設立されて5年、スタッフ一同毎日欠かさず川上村と吉野林業のことばかりを考えながら、過酷な現状に抗い続けています。