超現代語訳
川上村の吉野林業を学ぶ
これからの時代に活かせることを、
川上村と吉野林業の歴史に学びます。
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2021.9.12
■「吉野林業と優良材」に学ぶ (9) 吉野地方における人工植林の起り①
吉野地方は広大な森林を擁して、日本では最も早くから人工造林が始まった林業地として知られる。
吉野地方では中世の頃から木材伐出が行われていたが、太閤秀吉が領有して以降は、京阪神地方の大工事によって吉野材の搬出が拡大し、大阪が商工都市として成立するに伴って需要が増大していった。そうなると、出材に便利なところがだんだん伐りつくされ、造林の必要に迫られることになったものと考えられる。
そして徳川時代には幕府の植樹奨励などの影響もあって、吉野各郷で一斉に植林が始まった模様である。「吉野林業全書」によれば、吉野各郷における植林の始期は次のように記録されている。
川上郷 (現在の川上村)
文亀年間 (1501-1503年) 520年前
黒滝郷 (現在の黒滝村)
慶安年間 (1648-1651年) 422年前
西奥郷 (現在の五條市一部)
寛永年間 (1624-1643年) 392年前
北山郷 (現在の下北山村)
寛永年間 (1624-1643年) 382年前
小川郷 (現在の東吉野村)
元禄年間 (1688-1703年) 330年前
十津川郷 (現在の十津川村)
寛文年間 (1661-1672年) 359年前
中庄郷 (現在の吉野町の一部)
宝永年間 (1704-1710年) 317年前
池田郷 (現在の吉野町の一部)
元禄年間 (1688-1703年) 333年前
国樔郷 (現在の吉野町の一部)
元禄年間 (1688-1703年) 332年前
竜門郷 (現在の吉野町の一部)
安永年間 (1772-1780年) 249年前
参照:「吉野林業と優良材 (岩水豊 著)」
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大阪をはじめとする、京阪神の都市形成に対する木材需要に耐え得る搬出を可能としたのは、「大峰山の地下は黄金の浄土である」といった黄金伝承が、吉野地方が神聖な場所として「森林の乱開発」を免れ、中世に豊富な森林資源を引き継いでいたからとも言われています。
吉野林業発展のきっかけとなった重要な歴史背景ではありますが、需要喚起だけに囚われることなく、持続可能な人工造林サイクルを保ち続ける必要を考えさせられる場面でもあります。