超現代語訳
川上村の吉野林業を学ぶ
これからの時代に活かせることを、
川上村と吉野林業の歴史に学びます。
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2020.10.24
■「吉野林業全書」に学ぶ (56) 杉の垂木製造とその用途
杉の垂木は、間伐して3週間経過したものの中で最も小径木を材の長短と曲直に応じて、七尺、一丈(約2m~約3m)または、二間、二間半(約3.6m~約4.5m)に鋸で挽いたものをそのまま川辺に運ぶ。
そして、幹を傷つけないように節を取り除き、元口を川水に浸しておく。しばらくして川水が浸透した頃に、棕櫚(シュロ)の皮に細砂を包んで一本ずつ磨き上げる。
これを洗ってよく拭い乾燥させた上で納屋に入れ1か月以上置いておくと、自然に黄色を帯び美しい光沢が生まれる。
洗い垂木を販売先に運搬するには次のような荷造りをする。
長さ七尺(約2m):上等25本、中等35~36本、下等40~50本
長さ一丈(約3m):上等12本、中等17~18本、下等24~25本
長さ二間(約3.6m):上等8本、中等12本、下等16~17本
長さ二間半(約4.5m):上等6本、中等10本、下等14~15本
このように分けられた材は、それぞれ竹の輪にいれて1束としてこれを紙で巻いた上にさらに杉皮で包み縄で括る。表には発送人と受取人の住所姓名と材の本数を大きく書いて、材の木口には発送人の刻印を打っておく。
そして4束を1駄(馬1頭に背負わせられる量)として荷車に積んで運搬する。品質が中等以下の物は、紙や杉皮で包まずに1束のまま筏の上に載せて送る。
これらの材料は、家屋の天井子、庇の垂木、その他簡易な格子等に用いられる。
(備考)
洗い垂木は、寛文年間(1661~1672年)に始められたもので、現在(明治末期)でも多くの需要があり出荷は盛んである。
参照:「吉野林業全書」
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用途さえはっきりとしていれば、どのような材であれ需要は広がり供給のために仕事が生まれる。ごく当たり前の話です。
吉野杉であれば全てが銘木なんてとんでもない話もなく、その大径木からの銘木需要でさえ低迷を続け、この解説にあるような若齢の間伐材は捨てられてしまっています。
小さな力が挑むには大きすぎる「次の500年」に、手を差し伸べてくれる人の輪が広がっていくことに感謝し、考えること、チャレンジすることを続けるしかありません。